現代のさまざまな事件、いじめ、虐待、家庭内暴力等にみられる人びとの精神的な不安定さは、現代の「無縁社会」のなかで、「あなた(きみ、おまえ、等)」とよびかけあえる人がそばにいないという、孤独に起因しているのではないか。「わたし」が相手によびかけ、対話することで、第一人称と第二人称という人称関係が成立し、向きあいの関係が始まる。本書は「人称」をたんなる文法の問題ではなく、人間は社会的存在であるという観点から考察し、わたしとあなたとの向きあいの倫理の検討によって、孤独に苦しむ人びとを救う手がかりを探る。